仕事を探すうえで、年間休日の日数は重要です。しかし、最低ラインについて理解していなければ、過酷な環境で働くことになるかもしれません。

本記事では労働基準法における年間休日の定義や最低ライン、休日の種類、仕事を探すうえでのポイントについて解説します。

労働基準法における年間休日とは

年間休日のルールを知るうえでは、労働基準法における年間休日と最低ラインの意味が重要です。現在勤めている会社や転職先の会社が条件を満たしているかどうかを確認するためにも理解を深めておきましょう。

年間休日の意味

年間休日とは、労働者が1年間に取得することができる休日の総数を意味します。労働基準法で定められている「法定休日」は、週に1日以上、または4週に4日以上です。

このルールは、業種や職種、事業規模を問わず、すべての企業が満たす必要があります。また「法定外休日」は、企業独自のルールで決められている休日です。年末年始休暇やゴールデンウィークなどが当てはまります。この法定休日と法定外休日を合わせたものを「年間休日」と呼びます。

年間休日の最低ライン

労働基準法によりますと、1日8時間労働の事業所の場合、年間休日の最低基準は105日です。

労働基準法第32条では、労働者の労働時間は休憩時間を除き1週間40時間を超えてはいけない。1日8時間以上労働させてはならないと定めています。

出典:労働基準法第32条

365日を1週間(7日)で割り、40時間をかけた場合の、1年間の労働時間は2,085.7時間です。2,085.7時間÷8時間=260日となり、1年間の労働可能日数が計算できます。

365日-260日=105日が年間の最低休日数です。企業によっては、最低ラインを上回るケースも多いです。

さまざまな「休日」の基準

「休日」とひとまとめにしがちですが、実際には「休暇」「代休」「振替休日」など、いくつもの言葉があり定義が異なります。下記の言葉の意味と例について解説します。

  • 休暇
  • 休業
  • 代休
  • 振替休日
  • 有給休暇

休暇

休暇とは、本来労働者が勤務すべき日であっても、特定の理由に基づいて取得できる休みです。法律上のルールを満たす場合に、必ず企業が与えなければならない「法定休暇」と、企業により独自に設定している「法定外休暇」があります。

法定休暇には、年次有給休暇や生理休暇、法定外休暇には慶弔休暇やリフレッシュ休暇などがあります。また年次有給休暇以外、給料の支払いは義務ではないため、企業によりルールが異なる点に注意しましょう。

休業

休業とは、労働契約を継続した状態でありつつも、働くことができない状態を意味します。労働者側の都合、会社側の事情どちらのケースもあります。

例えば育児や介護による休業、災害による休業、経営不振での一時休業などが当てはまります。休業中は給料が出ないケースがあるものの、休業理由によって「休業手当」「育児休業給付金」「出産育児一時金」などが支給されるケースがあります。

例えば、会社都合による休業の場合、支給される休業手当は、平均賃金60%以上です。詳細は必ず会社に確認しましょう。

代休

休日出勤した後、労働者が申請して別の日(本来出勤すべき日)に休みを取る制度です。前もって休日を振り替えたわけではないため、企業側は休日労働分の割増賃金の支払い義務が発生します。

労働の後に取得すると「代休」であり、事前に取得すると次項で説明する「振替休日」の扱いになります。前と後で別の意味になり、割増賃金が支払われるかどうかが変わるため、注意してください。

振替休日

振替休日は、特定の休日を他の日に変更することを指します。例えば、日曜日に出勤し、代わりに金曜日に休みを取得するといった形です。出勤日となる日曜日の前に、会社に申請し同意を得ているかどうかがポイントになります。

また振替休日を取得する場合、労働基準法では、割増賃金の支払いはありません。ただし、時間外や深夜の労働となる場合は、割増賃金対象です。給与に影響するため、取得前に会社に確認しておくとスムーズです。

有給休暇

有給休暇の正式名称は「年次有給休暇」です。法律では、勤続6ヶ月で最低10日間の有給休暇が付与されます。企業によっては、有給休暇日数がさらに多いケースもあります。

有給休暇の場合、企業側は給与を支払う義務があります。また労働者は、取得理由を述べることなく、通院、私用、旅行、試験など自由に活用できます。企業には、労働者の希望する時期に有給を与える義務がある一方、業務の正常な運営を妨げる場合においては、取得日の変更を求める権利があります。これを時季変更権といいます。

年間休日が105日以下でも違法にならない?

前述したように、年間休日の最低ラインは105日です。しかし、条件を満たしている場合105日以下でも問題にならないケースがあります。労働時間や36協定の締結など、具体的なケースについて紹介します。

労働時間による

年間休日105日は、1日8時間フルタイムで働く人の場合の計算です。つまり、

1日の労働時間が6時間、5時間など、少ない場合は、計算上105日以下であっても法的に問題はありません。

だからといって、労働者の心身に悪影響を及ぼすような働き方は問題です。企業には、健康、生活環境などに配慮した勤務体系の提示が求められます。労働時間は短いものの、働く上で辛いと感じるのであれば、上司に相談したり転職を検討したりすることも重要です。

有給休暇を含むケースも

フルタイム勤務であれば、入社から6ヶ月の時点で10日間の有給休暇が付与されます。また、2019年4月より最低でも年に5日の有給取得が義務付けられました。つまり、仮に年間休日が100日だとしても有給の5日間を含むことで、105日の条件を満たします。

つまり労働基準法では100日に問題がないといった考え方になります。ただし、この時点では年間休日の条件を満たしているだけです。同時に、週40時間や1日8時間などの条件を満たしていることが求められます。

36協定を締結している

36協定とは、労働基準法36条に基づく労使協定を指す言葉です。36協定を

結ぶためには、社員過半数の労働組合との協定が必要であり、労働基準監督署長への届出が求められます。

36協定の時間外労働上限は、月45時間・年360時間です。年間6ヶ月までの範囲であれば、月45時間の労働が認められるため、年間休日最低ラインを一時的に下回る可能性があります。

労働形態が特殊

業務委託で働くフリーランスや個人事業主などの特殊な労働形態においては、労働基準法による年間休日が適用されません。請負契約の場合は、労働時間ではなく完成物の納品による契約となるため、自分自身がスケジュール管理さえできれば休日を自由に設定可能です。

しかし、一方で複数案件の納期が重なっている月などは、十分な休日を確保できないケースもあります。契約内容を確認したうえで、自ら仕事量の調整が求められます。

仕事探しで注目したいポイント

仕事をするうえでは、業務内容や職種、給与も重要ですが、同時に年間休日もチェックしておきたいものです。仕事を探すうえでの2つの注目ポイントについて解説します。

  • 入社前に休日についてリサーチしておく
  • 休日出勤の有無を確認しておく

入社前に休日についてリサーチしておく

求人票や募集要項をチェックする時点で、企業の年間休日や休暇制度を調べることが大切です。「週休二日制」「完全週休二日制」の表記についても理解を深め、入社後に後悔しないようにしましょう。

入社前に労働条件を確認すること自体は、問題ありません。口頭で質問しにくい場合は、労働条件通知書を確認する方法もあります。休日休暇だけでなく、休憩時間、残業時間なども確認できるため、入社後のミスマッチが防げます。

休日出勤の有無を確認しておく

企業によっては繁忙期などに休日出勤が求められるケースがあります。できるだけ早い段階で、企業の担当者に確認しておきましょう。休日出勤が常態化している職場には、人手不足や業務過多など、問題があるケースが多いです。

また、入社後に労働環境の課題に気づいた場合、退職手続きや転職先探しなど、時間のロスが生まれます。キャリアの構築が難しくなるため、必ず事前確認をおすすめします。

年間休日の最低ラインをクリアしていない会社は避けよう

1日8時間フルタイム勤務の場合、年間休日の最低ラインは105日です。労働時間や有給休暇を含むかどうかにより最低ラインは異なるものの、必ず事前に確認し、ゆとりを持った働き方を目指しましょう。

ちなみに厚生労働省 「平成30年就労条件総合調査 労働時間制度」記載の情報通信業の平均年間休日は、118. 8日です。ダイレクトリクルーティング「HUGAN」に登録し、理想の職場との出会いを待ったりすることをおすすめします。