「会社都合の退職」と聞くとデメリットがあると感じる方もいることでしょう。会社都合には人員整理や事務所の移転などが含まれ、突然解雇を告げられることもあります。

従業員側には2つのメリットがありますが、会社都合を自己都合に変えられてしまうと、この恩恵は受けられません。本記事では会社都合退職による従業員のメリットと会社のデメリット、退職願・退職届の提出の必要性についてわかりやすく解説します。

会社都合での退職とは?

会社都合の退職とは、自己都合ではなく企業からの退職勧奨などを指す言葉です。また、企業によっては退職一時金制度が適用され、一時金が支払われることがあります。会社都合の退職について、詳しく解説します。

退職一時金制度

退職一時金制度とは、従業員が退職する際に一括で支払われる退職金です。企業によって制度の有無や金額は異なります。一般的には、長年の勤務に対する慰労金として支払われるケースが多いです。また、従業員数が少ない企業ほど、退職一時金制度のみ(退職給付年金制度はなし)の割合が増える傾向があります。

退職一時金は「退職所得」です。そのため、税制上の優遇措置があります。計算式は、勤続年数が20年以下と20年超で異なり、長く勤めれば勤めるほど控除額が増えます。退職後の経済的負担が軽減される点は大きなメリットです。

退職勧奨で退職する場合は会社都合退職になる

退職勧奨とは、業績不振や人員整理などを目的に会社が社員やアルバイトなどに対して、退職を促す行為を言います。退職勧奨は、解雇とは異なり、あくまで会社が退職を提案している形です。仮に提案を受け入れたとしても、基本的には会社都合退職とみなされます。

会社都合退職の場合、待機期間の7日間が終わればすぐに失業給付金が受給できたり、受給期間が延長されたりするため、労働者にとってはメリットが大きいです。

会社都合退職・自己都合退職は正式名称ではありません。失業保険に関しては、会社都合退職者は「特定受給資格者」、自己都合退職者は「一般受給資格者」または「特定理由離職者」のカテゴリに入ります。

会社都合退職になる主なケース

会社都合退職になる主なケースとしては、次の3点が挙げられます。

  • 業績不振による人員整理
  • 事業所の閉鎖や移転
  • 契約の更新拒否

よくある理由のひとつが、会社の業績悪化による事業立て直しのためのリストラです。「何歳以上の社員については、退職金を上乗せする」などと伝え、自主的な退職を求めるケースも多いです。もちろん倒産も会社都合退職に含まれます。

事業所の閉鎖や移転に伴い通勤が困難となる社員が離職した場合、会社都合退職となるケースもあります。そのほか、契約社員や派遣社員など、契約期間満了後に会社が契約更新を拒否した場合も、会社都合退職とみなされることがあるため、自分が当てはまるかどうかの確認は重要です。

会社都合退職における退職者側の2つのメリット

会社都合退職と認められた場合、退職者側には次のメリットがあります。

  • 失業手当をもらえるタイミングと期間
  • 企業から解雇予告手当を受け取れる可能性がある

退職後の生活にも大きく関係するため、内容を詳しく解説します。

失業手当をもらえるタイミングと期間

会社都合退職は、自己都合退職に比べ、失業手当の受給がスムーズです。

基本手当の支給が受けられない期間
会社都合退職 待機期間7日間のみ
自己都合退職 待機期間7日+給付制限期間(2ヶ月または3ヶ月)

参考:厚生労働省/雇用保険受給者のみなさまへ

退職から短期間で失業手当が受給できるため、経済的な不安軽減につながります。また、自己都合退職者(一般受給資格者)に比べ、給付日数が長くなることもメリットです。

自己都合の場合は最大150日、会社都合の場合は最大330日と大きく異なります。年齢と雇用保険の被保険者期間により、給付日数の決定ルールは異なるため、自分の年齢と被保険者期間を調べたうえで、退職のタイミングを決めることも重要です。

参考:ハローワークインターネットサービス/基本手当の所定給付日数

企業から解雇予告手当を受け取れる可能性がある

突然の解雇は、労働者の生活に大きなダメージを与える可能性が高いです。そのため、労働基準法20条では、次のように解雇の際の手続きが決められています。

  • 少なくとも30日前までに解雇の予告を行う
  • 予告を行わない場合は、解雇と同時に30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を支払う

会社都合退職かつ解雇日まで30日を切っている場合、解雇予告手当が支給されます。支給は、会社の義務です。解雇予告手当は、突然の解雇・離職により、経済的な困窮を防ぐための支援だと知っておきましょう。

会社都合退職における会社側の3つのデメリット

会社都合退職は、労働者にとってはメリットが大きいものの、会社側には次のようなデメリットがあります。

  • 助成金制度を使えない
  • 解雇予告手当金が必要になるケースもある
  • 企業の名前に傷がつく可能性がある

会社側が会社都合を好まない理由をあらかじめ知っておくことが重要です。

助成金制度を使えない

退職勧奨を行うなどして会社都合による離職者がいる場合、一定期間、政府の助成金制度の利用に制限がかかります。下記はその一例です。

特定求職者雇用開発助成金

【対象となる事業主】

3.対象労働者の雇入れ日の前後6カ月間(以下「基準期間」という。)に、事業主の都合による従業員の解雇(勧奨退職を含む。)をしていないこと

引用:特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)のご案内

早期再就職支援等助成金(UIターンコース)

【0301 支給対象事業主】

計画書に定める計画期間の始期の前日から起算して6か月前の日から「早期再就職支援等

助成金(UIJターンコース)支給申請書」(U様式第7号。電子申請の場合は「支給申請書」。以下「支給申請書」という。)の提出日(以下「支給申請日」という。)までの間(以下「基準期間」という。)において、当該雇入れに係る事業所で雇用する雇用保険被保険者を解雇等(次に掲げるものを除く。)していない事業主であること。

引用:支給要領3早期再就職支援等助成金(令和6年4月1日時点版)

助成金が利用できないことで、経営の安定が困難となったり、資金調達が難しくなったりといったデメリットが想定されます。

解雇予告手当金が必要になるケースもある

会社には、従業員を解雇する場合、30日前までに予告する義務があります。急な事務所の移転やリストラなどが発生し、30日を過ぎて解雇予告を行う場合や突然の解雇の場合は、解雇予告手当の支払いが発生します。

解雇予告手当を支払うことで、会社の財務状況に影響を及ぼすケースもあります。計画外の支出となるため、当初の経営計画に支障をきたす可能性がある点にも注意が必要です。従業員の解雇を行う場合、これらのデメリットを理解したうえで、計画性を持って進める必要があります。

企業の名前に傷がつく可能性がある

労働者が解雇に納得していない状態で、無理に会社都合退職を勧めた場合、不当解雇として訴えられるリスクがあります。敗訴した場合は、損害賠償金の支払いが命じられたり、解雇の無効を求められたりする可能性も否定できません。

また裁判沙汰までに至らないとしても、会社都合退職が増えると、評判やブランド力が悪化します。SNSや転職サイトの口コミなども要注意です。退職した人物が、会社に対する悪評を広める可能性も想定されます。

その結果、採用活動にも悪影響を及ぼしたり、パートナー企業や取引先、顧客からの信頼を失ったりといったデメリットもあります。

退職願・退職届の提出は必要?

一般的に会社を退職する場合に提出する「退職願」「退職届」ですが、会社都合の場合は提出不要です。ただし、退職勧奨の場合は提出が必要な場合もあります。退職願と退職届の扱いについて、詳しく解説します。

会社都合退職の場合は提出不要

会社都合退職の場合、基本的に退職願や退職届を提出する必要はありません。ただし、会社側は、前述したようなデメリットがあるため、提出を求めるケースがある点に注意が必要です。

会社が求めるがままに退職願や退職届を提出してしまうと、自己都合退職として処理される可能性があります。退職の手続きは、会社側が行うものです。本来であれば、従業員が退職願や退職届を提出する必要はありません。また、退職届の提出は、法律により義務付けられているものではないため、会社が提出を求めてきた場合も、キッパリと断りましょう。

退職勧奨の場合は提出が必要な場合も

退職勧奨は、あくまで会社から従業員に対して「退職を促す」行為です。会社側に強制的に退職させる力はありません。もちろん、退職勧奨を拒否する選択肢もあります。そのため、退職勧奨による退職に同意した場合は、退職届の提出が必要なケースも存在します。

こういったルールは、企業の方針や手続き方法により異なるため、確認が必要です。また、通常退職勧奨に応じて退職した場合は「会社都合退職」として扱われますが、退職届を出したことで、自己都合扱いとして受け取られる可能性も否定できません。

退職理由の欄には「一身上の都合により」ではなく「退職勧奨により」と記載したり、「退職合意書」を作成したりすることをおすすめします。

これから転職活動を始めるなら転職サービスを利用しよう

会社都合による退職は、労働者にはメリットがある一方、会社側にはさまざまなデメリットがあります。退職後の経済的な安定を求めるのであれば、会社都合退職を自己都合退職に変えられないよう注意が必要です。

また、在籍中から将来的な転職を見据え、未経験からITスキルを身につけるオンラインプログラミングスクール「NINJA CODE」を活用したり、未経験の職種へのチャレンジを目指し、ダイレクトリクルーティングサービス「HUGAN」に登録したりすることで、急な退職勧奨に備えることもできます。「HUGAN」は無料で登録・利用できます。まずは気軽にプロフィールを登録し、転職によるキャリアアップを目指してみませんか。

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