SIer(システムインテグレーター)は、ITシステムの設計・開発・運用を請け負う企業です。日本の情報サービス産業の中核を担う存在ですが、さまざまな理由から「やめとけ」と言われることも少なくありません。

本記事では、SIerはやめとけと言われる理由の他、自分に合ったSler企業を見つけるための方法や、Slerのキャリアパスについて解説します。

Slerはやめとけと言われる5つの理由

SIerはやめとけと言われる主な理由は、以下の5つです。

  • ブラック企業が多い
  • 離職率が高い
  • 客先常駐が多い
  • エンジニアの技術が身につきにくい
  • 下請けが基本で収入が低い傾向がある

それぞれ詳しく解説します。

ブラック企業が多い

SIer業界では納期に追われるあまり、長時間労働が常態化しているブラック企業が少なくありません。深夜までの残業や休日出勤が当たり前のようにおこなわれ、エンジニアの心身に大きな負担がかかっています。

ワークライフバランスを維持することが難しく、プライベートな時間を十分に確保できないのが実情です。労働環境の改善とともに、効率的な業務遂行やマネジメントの強化が求められるでしょう。

離職率が高い

SIerのプロジェクトは客先常駐が中心で、自社内でのキャリアパスが見えづらいのが実情です。担当業務はプロジェクト間で異なることが多く、特定の専門性を深めたり、将来のキャリアを描いたりすることが難しい環境にあります。

また技術者としてのスキルアップの機会も限られているため、キャリアアップを求めて他業界へ転職するエンジニアも少なくありません。エンジニア一人ひとりのキャリアプランに寄り添い、社内での育成や技術力向上の仕組みを整える必要があるでしょう。

客先常駐が多い

SIerの業務形態の特徴として、客先常駐が挙げられます。エンジニアが取引先企業に常駐し、その環境下で開発をおこなうのが一般的です。

客先常駐では、自社の文化やチームワークを築くのが難しくなります。常に取引先の環境に合わせることを求められ、自社のエンジニア同士のコミュニケーションが不足しがちです。

また取引先との行き違いや社内との連携不足など、さまざまなストレス要因が存在します。プロジェクトごとに異なる環境への適応が求められるのは、エンジニアの大きな負担となります。

エンジニアの技術が身につきにくい

SIerのプロジェクトは、比較的短期のものが多い傾向にあります。数ヵ月から1年程度で終了するケースが少なくなく、じっくりと特定の技術を習得することが難しい環境です。

また最新技術を導入するプロジェクトが少ないのも問題と言えます。多くのSIerでは、旧来の技術を使ったシステム開発や保守が中心で、技術のキャッチアップが遅れがちです。スキルアップを望むエンジニアにとって、魅力的とは言い難い状況にあります。

加えて下請け構造も技術力向上の妨げとなっています。元請けの指示通りの開発では、エンジニアの裁量が限られ、新しい技術やアーキテクチャに触れる機会が乏しいのが実情です。

下請けが基本で収入が低い傾向がある

SIerは多くの場合、大手ベンダーなどの元請け企業から仕事を受注し、実際の開発をおこなう下請けの立場にあります。この構造では、元請けとの交渉力が弱く、契約条件によっては十分な利益を確保できないことがあるのです。

さらに元請けがコストカットを図る際、下請けであるSIerに無理な値下げを求めることがあります。SIerは元請けとの関係を維持するために、やむを得ずその要求を受け入れざるを得ません。その結果SIerの利益率は低下し、エンジニアの給与や待遇にも影響が及びます

避けたいSler企業の特徴

避けたいSler企業の特徴は、以下の4つです。

  • 自社サービスがない
  • 3次請け以下になっている
  • 若手ばかりor若手なし
  • 年収が低い

それぞれ詳しく解説します。

自社サービスがない

自社サービスを持たないSIerは、受託開発のみに依存した収益構造となっているため、経営基盤が脆弱で、事業環境の変化に対応しづらい問題があります。

自社サービスがないと、技術革新への取り組みが遅れがちになります。最新技術の導入やエンジニアのスキルアップへの投資が不足し、成長の機会が限られてしまうのです。

3次請け以下になっている

元請け、1次請け、2次請けと、下請け構造が複雑になるほど、プロジェクト管理の難易度が上がります。コミュニケーションロスが発生しやすく、責任の所在が不明確になる恐れがあります。

また下請けの階層が深くなるほど、エンジニアの給与は低くなりがちです。中間マージンが複数発生すると、実際に働くエンジニアの手取りが少なくなってしまいます。

若手ばかりor若手なし

若手エンジニアばかりの企業では、経験豊富な指導者が不足しがちです。若手の成長を支える体制が整っておらず、スキルアップが難しい環境だと言えます。

一方若手エンジニアがいない企業では、新しいアイデアや活力が不足しがちです。組織の硬直化が進み、イノベーションが生まれにくくなる恐れがあります。

年収が低い

エンジニアの給与水準が低いことは、モチベーションの低下や離職率の上昇につながります。優秀な人材ほど、より待遇の良い環境を求めて流出してしまうのです。

また経済的な理由から、優秀な新卒エンジニアや経験者の獲得が難しくなります。人材の質の低下は、組織の競争力の低下につながりかねません。

自分に合ったSler企業を見つける方法

自分に合ったSler企業を見つける方法は以下の4つです。

  • IT業界の就職・転職サービスを利用する
  • スカウトサービスを活用する
  • 口コミサイトをチェックしておく
  • 受託開発以外のサービスがある会社か確認する

それぞれ詳しく解説します。

IT業界の就職・転職サービスを利用する

IT業界に特化した就職・転職サービスを利用すると、効率的に自分に合った企業を見つけやすくなります。専門のエージェントが個人のスキルや経験、希望条件を踏まえて最適な企業を紹介してくれるからです。

またエージェントとの面談を通じて、最新の業界動向や、市場価値の把握にもつながります。自身のキャリアを客観的に評価する良い機会になるでしょう。

スカウトサービスを活用する

スカウトサービスに登録すると、企業からのオファーを受けられます。自分のスキルや経験、実績をアピールすることで、企業側からアプローチを受けられるのです。

特に高いスキルを持つエンジニアほど、スカウトを受ける機会が多くなります。受動的に良い求人に出会えるため、効率的な転職活動につながるでしょう。

口コミサイトをチェックしておく

自分に合ったSler企業を見つけるためには、口コミサイトを活用するとよいでしょう。実際に働いている社員や、過去に在籍していた社員の声により、企業の実態が見えてきます。

数字だけではわからない社内の雰囲気や人間関係、仕事のやりがいなどの情報を得られるでしょう。転職先を決める際の判断材料としての活用をおすすめします。

受託開発以外のサービスがある会社か確認する

受託開発と自社開発の違いを理解したうえで、自社開発のサービスを展開しているかを確認しましょう。自社サービスを持つ企業は、安定した収益基盤があり、競争力の高い事業を展開しています。

エンジニアにとっても自社サービスの開発に携われることは、メリットになります。サービスの成長に直接貢献でき、最新技術の導入にも積極的な企業が多いからです。

また自社サービスを持つ企業は、エンジニアの成長をサポートする教育体制が整っている場合が多いのです。社内勉強会や外部イベントへの参加支援など、スキルアップの機会が豊富と言えるでしょう。

Slerのキャリアパスは主に4つ

Slerの主なキャリアパスは、以下の4パターンです。

  • より待遇のよい企業に転職
  • 社内SEに転職
  • コンサルに転職
  • フリーランスになり独立する

それぞれ詳しく解説します。

より待遇のよい企業に転職

一般的なキャリアパスは、より待遇の良い企業への転職です。同業他社やIT業界の他業種への転職を通じて、キャリアアップを目指します。

自分のスキルや経験を武器に、より高い給与や充実した福利厚生を求めて転職するケースが多いでしょう。また新しい技術領域へのチャレンジや、マネジメントへのキャリアチェンジを目的とした転職も見られます。

社内SEに転職

社内SEは、自社内のシステム開発や運用を担当するポジションです。外部からの受託開発ではなく、自社のビジネスを支えるシステムの開発・運用により、専門性を高めます。

また社内SEは、事業部門との協働が求められます。業務知識を深め経営課題の解決に直接貢献できる、やりがいがあるポジションと言えるでしょう。

コンサルに転職

システム導入や業務改善のコンサルティング業務への転職は、エンジニアとしてのキャリアを広げられます。クライアントの課題を深く理解し、最適なソリューションの提案がコンサルの役割です。

コンサルとしての経験は、エンジニアとしての視野を広げ、ビジネス感覚を養うことにつながります。将来的にはプロジェクトマネージャーや、ITコンサルタントへのキャリアアップも期待できるでしょう。

フリーランスになり独立する

フリーランスとして独立すると、自分のペースで働けます。プロジェクトごとに異なる業務に携わるので、幅広いスキルと経験が得られます。

またフリーランスは、個人の能力が直接収入に反映されるため、高い収入を得ることも可能です。ただし案件の確保や、税務・法務の知識が必要になるため、一定の準備が必要です。

就職する企業を見極めてSlerとして働こう

SIerはやめとけと言われる主な理由は、ブラック企業が多いことや離職率が高いことが挙げられます。自分に合ったSIer企業を見つけるためには、IT業界の就職・転職サービスやスカウトサービスの活用、口コミサイトの確認、自社サービスの有無のチェックなどが有効です。

すでにIT業界で働いている方は、HUGANの転職サービスを利用すると、効率的にキャリアアップを目指せるでしょう。IT人材に特化した転職サービスの利用により、自分に合った企業と出会える可能性が高まるはずです。