ポータブルスキルとは、職種の専門性の他に、業界や業種、職種が変わっても持ち運びできる業務に関連するスキルのことです。近年、経済不安などから社会の先行きが不透明であり、将来の予測可能性が下がっています。このような状況でも活用できるのが、どのような環境下でも活かせるポータブルスキルです。

今回は、ポータブルスキルの定義と、構成する要素を解説します。また、ポータブルスキルが求められる背景や導入方法も解説しますので、理解を深めて転職活動にお役立てください。

ポータブルスキルとは?

そもそも、ポータブルスキルとは、どのようなスキルなのでしょうか。ここでは、厚生労働省における定義と、類似した表現であるテクニカルスキルとの主な違いを解説します。

厚生労働省における定義

厚生労働省における定義によると、ポータブルスキルとは、「職場や業界を超えて活用できるスキル(持ち運びができるスキル)」のことを意味します。

ポータブルスキルは、職種の専門性や業界、業界、業種などが変わっても業務の内容に依存しないスキルで、さまざまな職種や状況で応用可能なことが特徴です。

具体的には、プレゼンスキルやコミュニケーション能力、論理的思考力、交渉力、課題解決力などが該当します。

テクニカルスキルとの主な違い

ポータブルスキルと似た表現にテクニカルスキルがあります。

テクニカルスキルは、特定の職務に関連した専門的な技術を指します。例えば、データ分析やプログラミング、経理知識などが該当します。

一方、ポータブルスキルは、職務に限定されずに幅広い場面で役立つスキルである点で、テクニカルスキルとは大きく違います。

ポータブルスキルは、業務の変化に柔軟に対応できる力を強化するために重要な役割を果たします。

具体的なポータブルスキルの要素

ポータブルスキルは、現状把握、課題の設定、計画立案、課題の遂行、状況への対応といった具体的な要素から成り立っています。これらの要素を応用したのが以下の4つのスキルです。

  • 思考力
  • 課題解決能力
  • コミュニケーション能力
  • マネジメント能力

思考力

思考力は、さまざまなスキルの土台として発揮できるものです。身につけておくことで、複雑な問題を分析し、論理的に考えることが可能になります。

近年、デジタルツールの導入による自動化が進む中で、従来以上に自らの頭で思考しなければならないシーンは増えています。例えば、情報収集においても、どこから情報を得るのか、どのように活用するのか、といった思考が求められます。

なお、思考力には、クリティカルシンキング(批判的思考)や創造的思考も含まれます。

課題解決能力

ビジネスシーンにおいて特に欠かせないのが課題解決能力です。ビジネスにおいては、様々な状況で発生する課題に対し、効果的な解決策を見つける力が必要であるからです。

自ら積極的に問題を特定し、解決策の実行に至るまでのプロセスを遂行できる能力が求められています。具体的には、一つの問題に対して、問題定義、原因分析、解決策の検討および選択、実行、評価・改善を行える力を指します。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、他者と積極的に意思疎通を図り、関係構築ができる能力で、ポータブルスキルの中でも重要なスキルです。特にビジネスシーンにおいては、他者との情報共有や意見交換をスムーズに行ったりチームワークを尊重したりする力が求められるからです。

コミュニケーション能力には、伝達スキル、関係構築スキル、質問スキルが含まれます。

マネジメント能力

マネジメント能力は、プロジェクトやチームメンバーを適切に管理するスキルです。自己管理や他者の管理を行い、目標を達成するための計画や実行力が求められ、先にご紹介した思考力や課題解決能力、コミュニケーション能力など総合的なスキルの発揮が不可欠です。

また、ビジネスでチーム制がとられている場合には、チームのリーダーシップを取ることも必要であり、メンバーへ向けた効果的な指導が求められます。

ポータブルスキルが求められる理由

ポータブルスキルが求められる理由は以下の2つです。

  • 雇用体制が変化している
  • VUCAに対応する必要がある

それぞれの理由を解説します。

雇用体制が変化している

ポータブルスキルが求められている理由の一つは雇用体制の変化です。従来の日本では、終身雇用制が採られており、一つの職場で長期間働くのが一般的でした。しかし、社会情勢などから終身雇用や年齢序列が崩壊しており、一方ではフリーランスが増加するなど、柔軟性が求められる時代となっています。

異なる業界や職種への転職が一般化しているため、転職力を磨く手段として、ポータブルスキルの重要性が高まっています。

VUCAに対応する必要がある

VUCAに対応する必要があるのも、ポータブルスキルが求められる理由です。

VUCAとは、不確実性(Volatility)、不安定性(Uncertainty)、複雑性(Complexity)、曖昧性(Ambiguity)の頭文字を取ったものです。さまざまなことが確実でなく先行きが不透明な現代は「VUCAの時代」と呼ばれており、変化への適応力が求められています。

ポータブルスキルは、変化に対する柔軟な対応を可能にするためにも必要です。

ポータブルスキルを導入する方法

ビジネスシーンにおいてポータブルスキルを導入する最善の方策とはどのようなものでしょうか。ここでは、企業と個人に分けて導入方法を2つずつご紹介します。

  • 【企業】目標や評価制度を整える
  • 【企業】研修制度を取り入れる
  • 【個人】得意・不得意を理解する
  • 【個人】PDCAを意識する

【企業】目標や評価制度を整える

ポータブルスキルは企業における目標設定や人事評価制度の再構築に導入可能です。ポータブルスキルを重視した制度を導入することで、社員の意識を高められます。

ポータブルスキルの重要性を周知して、組織全体での理解を深めることも有効です。ポータブルスキルを上手く活用すれば社員の能力を見極められ、適材適所が叶う配置をしやすくなります。

上司からフィードバックを受けることがあれば、その内容に基づいて改善し、さらにスキルアップを目指せるでしょう。

【企業】研修制度を取り入れる

社員がポータブルスキルを身につけられる研修プログラムを提供するのも有効です。先述の通り、一言にポータブルスキルといっても思考力やコミュニケーション能力などざまざまな力が備わっています。

ロジカルシンキング研修やコミュニケーション研修などを実施すれば、各社員の成長を後押しできます。また、社外のノウハウを取り入れるきっかけにもなるでしょう。

【個人】得意・不得意を理解する

個人レベルでポータブルスキルを伸ばすには、自己分析を行って得手・不得手や自分に備わるスキルを洗い出し、どのスキルを強化すべきかを考えましょう。現時点で不足している力があれば、強化する方策を検討します。

人は環境によって変化します。そのため、一度自己分析やスキルの洗い出しをした後も、定期的に再評価し、成長を意識することが重要です。

【個人】PDCAを意識する

PDCAを意識することもポータブルスキルの導入に欠かせません、PDCAとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の頭文字をとったもので、これらをサイクルとし手まわすことで、スキルを磨きます。

学んだことを実践に活かし、次のステップに繋げるよう意識することが大切です。なお、PDCAを継続的に回せば、必然とマネジメントスキルが向上するため、全体的なポータブルスキルも強化できます。

ポータブルスキルを活かして転職活動に挑もう

ポータブルスキルは、職種の専門性に限らず、どのような業界や業種、職種でも発揮できる能力であり、先行き不透明な現代において重要視されています。

具体的なポータブルスキルに挙げられるのが思考力、課題解決能力、コミュニケーション能力、マネジメント能力です。

転職活動においては、ポータブルスキルを活かすことで、責任感ある役職への転職可能性が高まります。

ただし、自分では、ポータブルスキルを棚卸するのは困難なケースが少なくありません。ダイレクトリクルーティングサービス「HUGAN」では、プロのアドバイザーによるスキルの棚卸などのサポートも実施しています。自分に合った求人を見つけて効率的に転職活動を進めるためにも、ぜひご登録ください。